理論的な優位性を理解したところで、次はこの新しいワークフローが、いかに実践的でアクセスしやすいものであるかを具体的に示します。VSCodeとGitHub Copilotの組み合わせ、そしてAIネイティブエディタであるCursorは、どちらか一方を選ぶことも、目的に応じて使い分けることも可能です。
ここではそれぞれの導入方法と基本的な使い方を解説します。
ルート1:VSCode + GitHub Copilot
最も多くの開発者に馴染みのあるルートです。すでにVSCodeを使用している場合、GitHub Copilotを追加するだけで、AI支援機能を享受できます。
📥 導入ステップ
VSCodeのインストール
https://code.visualstudio.com/ から無料でダウンロード
GitHub Copilotの有効化
拡張機能マーケットプレイスから「GitHub Copilot」をインストール(月額$10、学生は無料)
追加推奨拡張機能
- Live Server(リアルタイムプレビュー)
- Prettier(コード整形)
- GitLens(Git視覚化)
✨ 実際の使用感
HTMLファイルを新規作成し、「<!DOCTYPE html>」と入力すると、Copilotが完全なHTML5ボイラープレートを提案します。「// ナビゲーションバーを作成」とコメントを書くだけで、モダンなナビゲーションのHTMLコードが自動生成されます。
// ナビゲーションバーを作成
→
Copilotが<nav>要素とBootstrapクラスを自動提案
ルート2:Cursor(AIネイティブエディタ)
VSCodeをベースに、AI機能を核として設計されたエディタです。より高度なAI統合と、プロジェクト全体の文脈理解が特徴です。
🚀 Cursorの特別な機能
🧠 プロジェクト理解
プロジェクト全体のファイル構造とコンテキストを理解し、より精密な提案を行う
💬 チャット統合
エディタ内でAIと直接対話し、コードの説明や修正を依頼できる
🎯 コマンドパレット
自然言語でコマンドを入力し、複雑なリファクタリングも簡単に実行
🔧 自動デバッグ
エラーを検出すると、自動的に修正案を提示し、ワンクリックで適用
🎨 実践例:ウェブサイト構築
Cursorで新しいプロジェクトを開始し、「モダンなポートフォリオサイトを作りたい」とチャットで伝えるだけで、ディレクトリ構造の提案から、HTML/CSS/JavaScriptファイルの雛形まで、一連の作業を支援してくれます。
実際のワークフロー:サイト構築の流れ
ステップ1:プロジェクト初期化
新しいフォルダを作成し、IDEで開きます。基本的なファイル構造(index.html, style.css, script.js)をAIの支援を受けて作成します。
my-website/
├── index.html
├── css/
│ └── style.css
├── js/
│ └── script.js
└── assets/
└── images/
ステップ2:コンテンツ作成
自然言語でコメントを書くと、AIが適切なHTMLマークアップやCSSスタイルを提案します。「レスポンシブなヘッダー」「カードレイアウトのサービス紹介」など、具体的に指示することで精度が向上します。
💡 実際のプロンプト例
例1:ヘッダー作成
// モダンなナビゲーションバーを作成
// ロゴ、メニュー項目(Home, About, Services,
Contact)
// レスポンシブでハンバーガーメニュー対応
// Bootstrap 5を使用
→ AIが完全なnavigation要素とBootstrapクラスを生成
例2:サービス紹介セクション
// 3カラムのサービス紹介セクションを作成
// 各カードにアイコン、タイトル、説明文
// ホバーエフェクト付き
// レスポンシブグリッドレイアウト
→ AIがcard componentとCSS animationを提案
例3:お問い合わせフォーム
// コンタクトフォームを作成
// 名前、メール、件名、メッセージの入力欄
// バリデーション機能付き
// 送信ボタンにローディング状態を表示
→ AIがform要素とJavaScriptバリデーションを生成
🎯 効果的なプロンプトのコツ
- 具体的に: 「美しい」より「Bootstrap 5でカード型レイアウト」
- 技術指定: 使用フレームワークやライブラリを明記
- 機能詳細: インタラクション要素も具体的に記述
- レスポンシブ: モバイル対応の要件も含める
ステップ3:リアルタイムプレビュー
Live Serverなどの拡張機能を使用して、編集中のファイルをブラウザでリアルタイムに確認します。変更が即座に反映されるため、デザインの調整が効率的に行えます。
ステップ4:デプロイ準備
完成したサイトを、Netlify、Vercel、GitHub Pagesなどの静的ホスティングサービスにデプロイします。多くの場合、Gitリポジトリと連携して自動デプロイが設定できます。
トラブルシューティングとコツ
🎯 効果的なプロンプト
- 具体的で明確な指示を心がける
- 「モダンな」「レスポンシブな」などの形容詞を活用
- 既存のフレームワーク名(Bootstrap、Tailwindなど)を明記
🔧 よくある問題と解決法
- AIが古い手法を提案 → 「最新のHTML5/CSS3で」と指定
- 提案が期待と違う → より具体的なコンテキストを提供
- コードが動かない → AIに「デバッグして」と依頼
💡 生産性向上のヒント
AI支援を最大限活用するためには、AIとの「対話」を意識することが重要です。完璧なコードを一度に生成しようとするのではなく、段階的に改善していく「イテレーション」のアプローチが効果的です。
技術的な準備は整いました
これらのツールと基本的なワークフローを理解することで、「IDE + AI」による新しいウェブ制作の世界への扉が開かれます。しかし、どんなに優れたツールでも、それを使いこなす「人間の要素」があってこそ真価を発揮します。
次章では、この新しいパラダイムにおける人間の役割について詳しく解説します。